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CGコード改訂&市場再編で注目 「社外取締役」という働き方

文/田中美和 撮影/武田雲、鈴木愛子

昨今、「社外取締役」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今なぜ注目が集まるのか?役割は?求められる資質と能力は――?その背景を解き明かしていきます。

注目される企業ガバナンスの”舵とり役”

 「社外取締役が果たす役割は、近年ますます重要になってきています」と話すのは、東京都立大学教授で企業戦略・財務戦略を専門とする松田千恵子さん。複数の上場企業で社外取締役としても活躍中です。

 社外取締役をめぐる動きでカギとなるのが、2015年に金融庁と東京証券取引所などを運営する日本取引所グループ(JPX)により公表された「コーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)」の存在です。CGコードとは、上場企業がコーポレートガバナンスを実現するための指針であり、ガイドラインです。

(写真:iStock/sihuo0860371)

 「ガバナンス」も近年、聞く機会が増えた言葉のひとつです。「ガバナンスの語源は、ラテン語の『船の舵をとる』という意味の言葉です。コーポレートガバナンスとは『企業統治』と訳されますが、わかりやすく言うと『関係者の間で企業の舵取りをどうするかをしっかり考えていくこと』です」と話すのは前述の松田教授。

 日本政府としては、コーポレートガバナンスを強化することが果断な経営判断を後押しし、収益力向上・成長力回復など日本企業全体の「稼ぐ力」に直結する重要施策として位置づけています。

 そんななか、経営の「舵取り(ガバナンス)」が正しくおこなわれるうえでの指針として示されたのが「CGコード」です。

 「CGコード」は、いわゆる「ソフトロー」なので罰則規定があるわけではなく、すべての原則に対する順守義務もありません。しかし、なぜ順守しないかを説明する必要があるため、上場企業や近い将来の上場を考える企業群にとっては十分に大きな影響をもたらしています。

 2015年に公表された「CGコード」では、「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように(中略)資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」と明記され、「社外取締役」がにわかに注目を集めるようになってきました。

増える社外取締役。
プライム企業では3分の1以上

 「CGコード」は2021年にも改訂されており、今年4月の市場再編で生まれた最上位市場である「プライム市場」上場企業においては「独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を勧める)」と明記されています。

 こうした方針を受けて大手新聞に「社外取締役1000人不足」といった見出しが出たことをご記憶の人も多いのではないでしょうか。

取締役会は「モニタリング・ボード」へ

 「2021年のCGコード改訂で、取締役会は経営の業務執行を監督する『モニタリング・ボード』としての性格が強くなりました」と話すのは一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会・代表理事の門多 丈さんです。

 上図は2021年のCGコード改訂のポイントを示したものです。門多さんが注目するのは今回のCGコード改訂で求められることになった「スキルマトリックス」の開示です。

 「スキルマトリックス」とは企業の取締役や監査役が保有するスキルや経験を一覧にしたもので、日本企業では縦軸に各役員の名前をおき、横軸にスキル・経験の内容を表にまとめて公表するケースが多く見られます(以下に一例としてソフトバンクグループのものをのせます)。

 横軸にどのようなスキル・経験を明示するかは各企業にゆだねられているので、その企業が何を重視しているか、取締役会に多様なスキル・経験を保有した人材が登用されているかがひと目でわかるようになっています。

社外だからこその観点が求められる

 「横軸が『営業』や『国際経験』などの表現では不十分。海外ではDXやESG/SDGsがスキル項目に入ってきています。一方でDX、ESG/SDGsに関しては社内だけで議論していてはなかなか世の中の流れがわからない。社外取締役がより貢献できる新しい領域だと思います」(門多さん)

 門多さんはスキルマトリックスは経営からの重要なメッセージだと言います。「取締役会で何を議論するべきだと考えているか、社外取締役にどんな貢献を期待しているか、スキルマトリックスを通じて取締役会の考えが明らかになります」

 実際、筆者は社外取締役として活動したいエグゼクティブ女性と企業とのマッチング事業を運営していますが、「サステナビリティに知見のある人を紹介してほしい」「財務・会計領域に詳しい人を紹介してほしい」など、スキルマトリックスの公表を受けて、より企業側が具体的なスキル・経験を明示したうえで候補者探しをするようになってきたと感じています。

 CGコードの改訂や東証の市場再編を受けて注目を集める社外取締役。一方で「課題も多い」と話すのは冒頭の松田教授です。どういうことなのでしょうか? 第2話へ続きます。

 (カバーデザイン:仲尾香織 写真:Igor Kutyaev/iStock)

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