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日本のスタートアップ・エコシステムはどう進化すべきか

読了時間4分 (2,291文字)

構成/小林恵進

世界最先端から学びながら、日本流のスタートアップエコシステムを創れれば、日本はきっと挽回できる。シリコンバレー在住の著者が説く「スタートアップ進化戦略」。

日本のスタートアップ・エコシステムの遅れ

 イノベーションの担い手であるスタートアップを徹底支援する──第101代総理大臣に選出された岸田文雄氏は日本の成長戦略として、こう宣言しました。

 細かい施策はまだ明らかになっていませんが、スタートアップ・エコシステムを強化していく方向性は間違っていないと思います。なぜなら、日本のスタートアップ・エコシステムは弱いからです。

 OECD(経済協力開発機構)が実施した「ベンチャーキャピタル投資の国際比較」によれば、日本のベンチャーキャピタル投資額の対GDP比は0.03%となっており、米国の13分の1、G7諸国最下位のイタリアに次いで低い数値となっています。

 また、GEM(Global Entrepreneurship Monitor)が大学生の起業意向を調査したところ、フランスでは7割の大学生が「起業したい」と思っているにもかかわらず、日本はほとんどの人が「起業したい」と思っていない。起業意向の数値は調査対象国の中では、ダントツで最下位です。

 投資額も少なく、起業家の母数も少ない。そうした背景もあり、ユニコーン企業(時価総額10億ドル超の未公開企業)の数は2021年3月1日時点で米国274社、中国123社、欧州67社であるのに対し、日本はわずか7社にとどまってしまっています。

 世界と比較すると、日本のスタートアップ・エコシステムは遅れをとっている、と言わざるを得ません。

 とはいえ、ここで悲観していても仕方ありません。日本が世界のスタートアップ・エコシステムの事例から学び、日本オリジナルのスタートアップ・エコシステムを作っていけば、まだ挽回するチャンスはあると思っています。

 私は中国に2年間、シリコンバレーに14年間在住し、独立系ベンチャーキャピタル「デライト・ベンチャーズ」のマネージングパートナーとして、世界のスタートアップ・エコシステムを観察してきました。

 この連載では私の経験をもとに、さまざまな視点から日本のスタートアップ・エコシステムがどのように進化していけばいいのか、その戦略を語っていければと思います。

銀行員を経て、DeNAに入社するまで

 具体的な話を始める前に、簡単に私の自己紹介をさせてください。

 私はDeNA(ディー・エヌ・エー)で19年ほど働いた後、同社の代表取締役会長を務める南場智子氏とともに、2019年9月デライト・ベンチャーズを立ち上げました。現在はマネージングパートナーとして、シリコンバレーを拠点に、投資活動を行っています。

(写真:iStock)

 もともと、私は考古学者を目指しており、そのために京都大学文学部に入学しました。

 しかし、大学で勉強を続けていくうちに考古学の年功序列や丁稚奉公の文化を退屈に感じるようになり、考古学者を目指すのをやめて、就職することにしたんです。

 いずれは独立したいという漠然とした思いはあったものの、どこから始めてよいか検討もつかず、「つぶしがきくだろう」という理由で銀行に入社しました。今思うと生意気ですが、当時は「5年ぐらいで辞める」と周りに言っていました(笑)。

 大学では考古学しか勉強していなかったので、銀行に入社したものの、売り上げと利益の違いも分かっていませんでした。そんな状態の私を銀行は1年ほどかけて徹底的に教育してくれて、1年目が終わる頃には金融商品の営業や基本的な与信審査ができるようになったんです。

 ただ、それと同時にドットコム・バブルが起こり、私と同じくらいの年齢の人たちが起業して上場する姿を目にして、「これは5年も待ってられないな」と。そのときに1年4カ月ほど勤めた銀行を辞め、IT企業に転職することを決めました。

 7社ほど面接を受けた中、一番最初に決まったのがDeNAだったんです。

 当時、「DeNAには優秀な人が多いらしい」という評判を聞いていたこと、さらに南場と話をして「DeNAははつらつとして面白そうな会社だな」と思ったこともあり、入社を決めました。

DeNAでの失敗と世界のスタートアップ

 オークションサイト「ビッダーズ」が立ち上がって間もない2000年に、DeNAに入社しました。

 入社直後は、不要品買取ネットワーク「おいくら」の立ち上げメンバーとして営業や企画に従事。その後、ビッダーズの広告事業や事業提携部隊を立ち上げるなど、新規事業の開発に注力していました。

 当時のDeNAは、シリコンバレーのスタートアップでも考えられないほどに次々とピボットして新規事業を立ち上げ、当たったサービスが出たら、それをベースに全く新しいサービスを作り上げる。そんな感じで、どんどん成長していき、2005年2月に東証マザーズに上場しました。

 その後、私はDeNAの海外展開の先導役を託され、2006年に日本を離れました。2年ほど中国に住み、2008年からは米国のシリコンバレーに移ったのですが、結果的にDeNAの海外展開は大失敗に終わります。この失敗の理由については、第8話で詳しく説明しようと思います。

 10年ほどシリコンバレーから日本を見る中で感じたのは、国内では一見盛り上がっているように見えるスタートアップも、まだ経済のニッチなプレーヤーで、海外展開はおろか経済の牽引役にはなっていない、ということでした。

 一方、世界を見てみると10年ほど前からスタートアップが経済全体の成長の牽引役として機能しています。次からは、世界のスタートアップの役割について見ていきます。

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