
AI時代のコンサル進化論
コンサルティング業界、AIの衝撃 - 若手採用はどうなる?未来のキャリア戦略とは
急速に進化するAI技術は、コンサルティング業界にどのような影響を与えるのだろうか。特に若手採用や業界構造の変化など、気になる点は多い。専門家である渡辺秀和氏に詳しく聞いた。

Q. 生成AIの台頭によって、コンサルティング業界の採用傾向はどう変わると思いますか?
今後、生成AIの発展により、コンサルティング業界は大きな影響を受けると考えています。既に多くのファームでは、資料作成やデータ収集・グラフ化などの基礎的な作業をAIが代替している現実があります。大手ファームでは会社がAIツールを提供していますし、そうでないところでも個人がプロンプトを工夫して活用しています。

この流れを受けて、多くのファームのパートナーは「若手層の採用がそれほど必要ないのでは」と考え始めています。アソシエイトやアナリストの仕事はAIの方が速く、人件費もかからないという判断です。今後はシニアコンサルタントやマネージャークラスの人材がAIをうまく使いこなして効率的に仕事を進める世界観が始まりつつあります。
この変化は早ければ今年から来年にかけて本格化する可能性もあります。ただし、デジタル技術を活用した新しいプロジェクトの需要が多いため、すぐに若手採用が激減するわけではないでしょう。
Q. この問題はコンサル業界だけの話ですか?
これは実はもっと大きな話です。同じことが他の産業でも起こるはずです。例えば一般企業の経理部門を考えてみましょう。経理業務の量は基本的に決まっています。そこでAIを活用して効率化が進めば、新しい若手社員を採用する意味が薄れてきます。この問題は日本の多くの企業、特に管理部門系の業務で起こり得ることです。
ただし、日本特有の事情として労働人口の急速な減少があります。AIによる業務代替と人手不足のバランスがどうなるのかは予測が難しい部分です。AIが人手不足を補うというプラスの側面もあれば、若い世代の雇用がさらに厳しくなるというマイナス面も考えられます。
Q. 人材育成の観点からどのような課題がありますか?
ここで大きな課題が生まれます。マネージャークラスになるためには、ある程度の経験年数が必要です。部下としての仕事経験がなければ成長できない側面があります。AIが進化しても人間の成長スピードはそれほど上がらないため、若手をどう育てるかという問題が生じます。
一部のファームでは、少数精鋭で若手を採用し、将来のマネージャー・パートナー候補として育てようという考えも出ています。しかし、5〜6年かけて育てた人材がヘッドハンティングされてしまうリスクがあります。そうなると「育てた方が損」という状況が生まれ、企業が人材育成に消極的になる恐れもあります。
一方で、AIを活用した教育システムが発展すれば、未経験者を早く上司レベルに育成できる可能性もあります。AIが表情解析なども含めたコミュニケーション分析ができるようになれば、経験年数の壁を低くすることができるかもしれません。
Q. 今後の採用動向はどうなりそうですか?
現時点では、ほとんどのコンサルファームもベンチャー企業も積極採用を続けています。特にベンチャー企業は資金調達に成功したところが多く、人材を採用して攻めの姿勢を取っています。
ただし今後は、業務の性質によって採用傾向が分かれていくでしょう。業務量が固定的な管理部門系では採用減少の可能性がある一方、営業や事業開発など収益拡大に直結する部門では人材が多いほど良いという判断になる可能性があります。後者については引き続き人材の奪い合いが起こるでしょう。
Q. 日系ファームが成長している背景は何ですか?
日系グロースファームが伸びている理由はいくつかあります。まず円安の影響があります。外資系大手ファームはドルやユーロベースでフィー基準を決めているため、為替変動によって日本企業からすると突然値上げされたように感じられ、納得感が薄れます。
また、外資系ファームは本国に納めるロイヤリティが存在するため、必然的に高いフィーを設定する必要があります。対して日系ファームは価格を抑えつつも、利益をすべて社員に還元できるという構造的な違いがあります。
さらに、ポストコンサルとしてベンチャー企業設立や経営参画を目指す人材にとって、日系グロースファームは上場を目指すなど成長志向が強いため魅力的に映ります。高い報酬と将来性で優秀な人材が集まっているのです。
ただし、今後はAIを活用した新しい「囲い込み」の形が登場する可能性があります。大手外資系ファームは独自AIモデルを開発し、クライアント向けに解放することで、そのプラットフォームを使った経営の意思決定を促そうとしています。これはアウトソーシングビジネスと同様、一度導入すると簡単には関係を切れなくなる戦略です。
Q. 若い世代はどんなスキルを伸ばすべきですか?
AIを活用するスキルを身につけることは大前提です。しかし、意外かもしれませんが、AIが得意でない「社会人としての振る舞い」「顧客との接し方」「人の気持ちを感じ取る力」「場に合った適切な発言力」といったコミュニケーション能力がより重要になります。

プロンプトの書き方はプログラミングに比べればはるかに簡単です。むしろ、AIが作ってくれたデータや資料を元に、どのタイミングでどのように伝えれば効果的かを調整できる力が価値を持ちます。
また、今後はAIをうまく活用できるマネージャークラスの人材が非常に価値を持つでしょう。一人でチーム分の仕事ができるため、そういった人材の移動は「チームごと来たような」効果をもたらします。こうした人材の獲得競争は激しくなるでしょう。
Q. キャリア形成で大切なことは何でしょうか?
キャリア戦略を立てることが重要です。現在の自分から将来のビジョンに至るまでの「キャリアの階段」を設計することが必要です。

例えば社会起業家を目指す場合、一般企業での営業経験だけでは足りないでしょう。コンサルティングやベンチャーキャピタル、ベンチャー企業の事業開発などでスキルを身につけながら、関心のある業界の経験も積む。このように段階を踏んでキャリアを設計することが大切です。
そのためにまず自分が本当は何をしたいのかを考えることが第一歩です。日記をつけて自分の思いや考えを記録し、自己理解を深めることをお勧めします。若いうちに自分のやりたいことが明確になれば、早くそこに向かって進むほど有利です。心配な気持ちから目の前の「美味しい話」に飛びつくのではなく、自分の本当の望みを見つめることが成功への近道なのです。
