
エンジニア採用・開発組織づくり7つの誤解
エンジニア採用の7つの誤解!デブレル活動の本質と効果的な実践法
エンジニア採用が困難を極める現代、多くの企業が「デブレル(DevRel)」活動に注目しています。しかし、その本質を理解せずに始めると、効果は限定的。エンジニア採用のプロフェッショナルが語る「開発組織づくりの7つの誤解」から、効果的なデブレル活動の秘訣を探ります。

Q. 「有名企業なら採用できる」という誤解について教えてください
有名企業だからエンジニア採用は簡単だと考える企業は多いですが、これは大きな誤解です。企業の知名度が高くても、全てのエンジニアにとって魅力的な職場とは限りません。
エンジニアは本質を見る傾向があり、「どういう技術で世の中に貢献できるのか」「どのようなチャレンジができるのか」という視点で企業を評価します。そのため、単に有名というだけでなく、具体的にどのような技術でどのようなことができるのかを明確に提示することが重要です。
例えば総合商社などは就活ランキングでは人気があっても、エンジニアにとっては「活躍する姿が想像できるか」という点で選ばれにくい傾向があります。対照的に、技術で世の中を変えていくテック企業は、エンジニアにとって魅力的に映ります。日本の有名企業でも、海外のテック企業と比較した時に技術情報の発信が不足していれば選ばれません。
Q. 「スカウトを打てば採用できる」という誤解について説明してください
スカウトメールを送れば採用できるという考えも大きな誤解です。現在のエンジニアは何十件、何百件ものスカウトメールを受け取っており、多くの場合開封すらされません。
エンジニアの関心を引くには、企業自身がエンジニアにとってどのような魅力があるのか、どのような開発環境を提供できるのかを明確に伝える必要があります。多くの企業がテンプレートでスカウトメールを送っており、名前を間違えていたりそのままのテンプレートだったりすると、エンジニアには「本当に欲しいと思って連絡してきているのではない」と見透かされてしまいます。
スカウトメールの中でも、相手を理解し自社を理解した上で、「あなたにはこういう環境を提供でき、活躍できると思う」という内容であれば刺さることもあります。しかし、スカウトメールのタイトルや送信元の会社名だけでも興味を持ってもらえるよう、事前のブランディングが重要です。
Q. 「待遇が良ければ採用できる」という誤解はどういうことですか
給与や働き方だけでエンジニアを採用することはできません。リモートワークは当たり前となり、フルリモートを求める声も多い中、企業の魅力が伝われば必ずしもリモートワークでなくても入社するケースは多くあります。
重要なのは、会社が何を目指しているのか、どういう事業を解決しようとしているのか、どういった開発環境を提供できるのかをしっかりと伝えることです。もちろん待遇も重要な要素ですが、エンジニアは総合的に企業を評価する傾向があります。
市場価格に見合った待遇を提供することは必要条件ではありますが、十分条件ではありません。また、人によって重視するポイントが異なるため、個々の状況や希望を把握することが大切です。近年はエンジニアの給与の急上昇が落ち着き、企業側も給与以外の魅力を伝えることがより重要になってきています。
Q. 「カジュアル面談をすれば採用できる」という誤解の実態は
カジュアル面談の本来の目的を取り違えているケースが増えています。本来は気軽に話せる場を設けることが目的なのに、実際には選考の一環として扱われているケースが多いのです。
例えば、カジュアル面談なのに志望動機を尋ねたり、職務経歴書の提出を求めたり、さらには合否通知が来たりするケースもあります。「カジュアル面談は実施しますが、誰と受けるかはフィルタリングします」といった対応も、本当の意味でカジュアルとは言えません。
カジュアル面談を成功させるポイントとして、技術トップ(CTO等)が出席することが効果的です。また、エンジニア同士の対話の場とすることで、キャリアの話など共通の話題で盛り上がりやすくなります。
Q. 「ブログ、SNS、イベントをやればOK」という誤解について
技術ブログを書いてSNSで発信したり、イベントを開催すれば採用できるという考えも誤解です。これらの活動は重要ですが、単に「やる」だけでは効果は限定的です。
重要なのは、何のためにそれをするのか、どんな価値を届けたいのか、テーマ性も含めてしっかり考えることです。エンジニアにとって本当に価値のある情報や経験を提供できるかを考える必要があります。
特にイベントについては、現在は多くのイベントが開催されており、集客が難しくなっています。そのため、まずはブログやSNSで発信し、ファンとなるエンジニアを集めてから、ある程度の規模になった段階でイベントを開催するという順序が効果的です。
Q. 「コミュニティは趣味のたまり場」という誤解について
コミュニティはエンジニアにとって非常に重要な存在です。単なる趣味のたまり場ではなく、新しい技術の情報交換や技術共有、キャリア支援の場としての役割も果たしています。
エンジニアが集まってキャリアパスを考えたり、キャリアアップを考える場にもなっています。また、新しいバージョンが出た時に集まって情報交換し、良かった点や悪かった点を共有して開発に役立てるという循環があります。
エンジニアの世界では技術の進化が非常に速いため、本などで学んでいると情報が古くなってしまうリスクがあります。そのため、生の情報をリアルタイムで交換できるコミュニティの存在が重要なのです。このような背景から、企業としてコミュニティを大切にする姿勢が必要です。
Q. 「外向けの発信をすればOK」という誤解とは
外向けの発信だけでは不十分です。発信する人たちはエンジニア自身であるため、採用担当者がエンジニアとコミュニケーションを取り、発信しやすい環境作りをすることが重要です。
エンジニアが組織のことを良いと思っていなければ、外向けの発信はできません。発信している内容と内部の実態に差があれば、評価は下がっていきます。そのため、インナーコミュニケーションを重視することが必要です。
外向けと内向けのコミュニケーションのバランスとしては、半々くらいを意識するとよいでしょう。特にエンジニアの場合、リーダークラスだけでなく、一般のエンジニアも発信する機会が多いため、全員が納得感を持っていることが重要です。ブログ執筆をノルマにするなど強制的なアプローチではなく、エンジニアがアウトプットしやすい仕組みを一緒に考える姿勢が大切です。
Q. デブレル活動を成功させるポイントは何ですか
デブレル活動を成功させるポイントは以下の3つです。
1. 具体的で実現可能な戦略を立てる: 単なる技術紹介にとどまらず、企業の技術的な価値や長期的なビジョンを示すことが重要です。オープンソースへの貢献方法、技術イベントの開催方法、ブログや技術レポートの公開など、エンジニアが興味を持てるコンテンツ制作活動を計画しましょう。
2. エンジニアとの連携関係を構築する: 外向けの発信はエンジニアが主体となって行うことが効果的です。採用担当者や開発組織と協力体制を組んで実施することが重要です。
3. 継続する: 一時的なイベントやキャンペーンではなく、定期的な活動や情報発信を通じて技術者との接点を持ち続けることが大切です。エンジニアコミュニティを継続的に支援し、存在感を出していくことは長期的なプロジェクトとして構築すべきです。
デブレル活動の成功事例としては、メルカリ、LINE、ヤフー、夢美、タイミーなどが挙げられます。これらの企業は開発者向けの社内外の取り組みをしっかり行っており、エンジニアコミュニティへの貢献も積極的に行っています。トヨタなど伝統的な大企業でも、自社でイベントを立ち上げてコミュニティを作るなど、うまく取り組んでいる事例があります。
デブレル活動を始める際は、なぜそれをするのか、継続できるのか、予算を確保できるのかなど、長期的な視点で戦略を立てることが重要です。ただの流行りに乗るのではなく、2〜3年継続できるか、社内のエンジニアを巻き込めるかを考慮して設計する必要があります。
