
おじさんのトリセツ。「いじり」は厳禁
幸せなおじさんになるための秘訣とは?価値観の分散投資で40代からのソフトランディングを目指そう
おじさん世代のメンツとプライド、世代間のコミュニケーションギャップなど、現代社会における「おじさん問題」。昭和の価値観を持つおじさんたちが、新しい時代にどう適応していけばいいのか。専門家たちがおじさんの心理と共存のヒントを語りました。


Q. おじさんが持つ特徴的な心理とは?
おじさん世代には「メンツを潰されたくない」という強い心理がある。会社でもプライベートでも、かっこいいと思われたいが、かわいそうだとは絶対思われたくないという感覚を持つ人が多い。お笑いライブでも、芸人は女性客にはガンガンいじるのに、男性客には髪の毛のことなど見た目をいじらない。これは「地雷」を踏む確率が高いからだ。
男性は感情表現や自己開示が苦手な傾向があり、「寂しい」「辛い」と言うと舐められるという脅迫観念を持っている。プライドが高く、自分の弱さを認めるのが苦手だ。リーダーシップに必要なのは脆弱性(バルネラビリティ)だと言われても、「そんなことできるか」と拒絶反応を示す。
Q. 現代のおじさんはなぜ変化に弱いのか?
現代のおじさんは明治時代の武士に似ている。「こう生きるべきだ」という強固な価値観を持ち、その価値観を最後まで変えられない。これは霊長類の社会的階層にも共通する特性だ。
猿の実験では、1匹の子猿が海水で芋を洗って食べる行動を始めると、他の子猿やメス猿は真似をしたが、ボス猿だけは最後まで真似しなかった。上位階層の個体ほど自分の習慣を変えられないという傾向がある。
社会的に高い階層にいる人より、若い世代や社会的地位が低い人の方が変化に強い。40代は「ラスト侍」とも言える世代で、これからの時代には価値観の更新が必要だ。
Q. おじさんとのコミュニケーションで気をつけるべきポイントは?
おじさんとのコミュニケーションでは「メンツを立てる」ことが重要。メンツを潰されたと感じると強く反発する傾向がある。社内で上手に立ち回る人は、この点を意識してコミュニケーションをとっている。
また、おじさん世代は「いじられる」ことに弱い。若い頃は「いじめられた」経験があっても、それは「鍛える」という意味合いだった。一方、「いじられる」というのは自分が意識していない部分をバカにされることで、特にかっこいいと思って来ていた服装などを指摘されると不愉快に感じる。
Q. 幸せなおじさんになるために40代から心がけるべきことは?
人の幸せにとって最も重要な要素は「繋がり」だ。仕事の成功や経済的な豊かさも大切だが、人間関係の質が幸福感に大きく影響する。他者と良好な関係を築くコミュニケーションスキルを磨くことが重要。
昭和型のトップダウン式の「お前、やれ」というコミュニケーションではなく、相手の話を聞き、励まし、対話するスキルを身につけるべきだ。女性に対しても男性に対しても、上から目線ではなく、うまく励ましたりできるコミュニケーション能力が求められる。
Q. 「価値観の分散投資」とはどういう意味?
幕末の武士のように一つの価値観だけでは生きづらい時代になっている。そこで重要なのが「価値観の分散投資」。複数の価値観を持つことで、社会の変化に対応しやすくなる。
具体的には、自分がマイノリティになる空間に身を置くことが有効だ。女性の多い場所に一人で参加する、海外に留学するなど、自分と違う価値観の環境に身を置くことで視野が広がる。
ただし、留学しても自分と同じ考え方の人とばかり付き合っていては意味がない。違うOSで動いている、違う価値観を持つ人々と積極的に関わり、自分の価値観のポートフォリオを広げることが大切だ。
Q. 中高年女性と中高年男性の違いとは?
中高年女性は加齢とともに女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強くなる。すると「人の目を気にしなくなる」「女性らしく見せなければという意識が薄れる」といった変化が起き、むしろ生きやすくなる側面がある。
一方、中高年男性は男性ホルモンが低下し、活力が減少する傾向がある。しかし60歳前後になると、リタイア後にアクティブになる人も多い。高尾山に大勢で登山に行くなど、定年後に活発になる傾向がみられる。
性別に関わらず、「らしさ」という足枷から解放されることで人生は楽になる。男らしさ、女らしさといった固定観念に縛られず、自分らしく生きることが幸せへの道だ。
Q. なぜおじさん世代は「聞く」ことが苦手なのか?
多くのおじさんは「聞く」より「話す」ことを優先する傾向がある。「俺の話を聞け」というマウンティング的な姿勢で、自分の良さをアピールすることに終始している。
ある企業研修では「聞く」スキルを教える講座を開いたところ、手を挙げるのは女性ばかりで、男性は「聞いて何の意味があるのか」と懐疑的だったという。
しかし、実際には人の話を聞き、認めることで相手のやる気を引き出せる。ウォーレン・バフェットなど成功した経営者も「聞く」ことが上手な人が多い。編集者などの仕事も「聞く」ことが本質で、聞き上手な人が重宝される。
Q. おじさん世代と若い世代が共存するには?
おじさん世代が感情を表現し、自己開示することは、人間関係を深めるために重要だが、それが難しい場合もある。そこで役立つのが「お酒」だ。アルコールは脳の緊張を緩め、自己開示を促進する効果がある。タバコも同様に会話を促進する効果があり、「タバコ部屋」で話が弾むという現象が起きる。
また、組織文化も変える必要がある。上下関係で成り立つ日本の組織文化は今や崩れつつあり、敬語や「させていただきます」といった表現にこだわる文化を見直す時期に来ている。
若い世代はおじさん世代の価値観を尊重しつつも、新しい価値観を提示していくことが大切だ。一方、おじさん世代も若い世代から学び、自分の価値観を更新していく柔軟性が求められている。
