
2022年11月9日
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田中 経済同友会の新企画「クロスリーチ」は、若手経営者の「そもそも経済同友会とは、何ができる組織なんだろう」という疑問をきっかけに、「もっと先輩経営者と若手経営者が、深く話せる企画はないだろうか」と考えて立ち上げたものです。
先輩経営者と若手経営者が2対2で自由に対話を深め、それを見た若手経営者が「経済同友会って面白いところだな」「経済同友会をこんな風に活用すればいいのか」と理解を深めてもらえればという狙いがあります。

冨山 なるほど、お互い自由に対話をするわけですね。
恒田 日本のトップリーダーとして活躍されているお二人が、若いときにはどのような苦労をされてきたのか、悪戦苦闘されたお話などを伺って、勇気をいただきたいです。

冨山 格好悪い話はいくらでもありますから(笑)。
鈴木 若い世代の経営者は、経済同友会に何人くらい参加しているのですか。
恒田 40代以下の会員は140名ほどで、全体の10パーセントくらいですね。
田中 そもそも、若い世代の経営者は経済団体というものにあまり興味がないんです。経済団体が何をしている団体で、どんな影響力があって、何を発信できるのか、それもよく分かっていません。
鈴木 なるほど。まず、日本には大きな経済団体が3つありまして、日本経済団体連合会と日本商工会議所、そして経済同友会です。
この中で、経済同友会だけが少し毛色が変わっていて、経営者個人に入会資格があるんです。会社の収益状況や推薦人などの規定はありますが、それをクリアすれば入会できます。

ちなみに経団連や商工会議所は企業単位で入会資格が発生するので、委員会や提言も「企業としての意見を表明する」という形になります。一方、経済同友会は「経営者個人の意見をどんどん言ってください」というスタンスが多いですね。
つまり、経営者“個人”の主体性や意欲を尊重した団体であるというのが特徴なんです。
冨山 組織の成り立ちから見ると、商工会議所は戦前の産業報国運動の時代から政府主導でつくってきた仕組みで、中小企業との関係性が強い組織です。経団連は、戦後に大企業が主導してつくった経済政策のための団体。
一方で、我々の経済同友会は、もともと同好の士が集まって立ち上げた組織です。設立趣意書にも『気楽に親交を温める倶楽部でもある』と書かれてあるとおり、「みんなで集まって自由に議論しましょう」という雰囲気がありますね。

恒田 確かに、他の団体では企業として参加しているため、誰かとお話をするには「前もって手順を踏まなければ」というハードルを感じていますが、経済同友会は少し空気が違いますね。
「個人資格で参加する」という独特の仕組みがあり、まさに今、“レジェンド経営者”と同じテーブルを囲んで、直接お話が聞けるという環境は、すごく良いなとあらためて感じました。
鈴木 ただ、我々含めて経済団体は、だんだん発信力や影響力が落ちているのではないかとも思います。経済同友会の意見を「どういう形で政府や国民に広く知ってもらうか」という課題があるのではないでしょうか。
冨山 若い世代は新聞よりニュースアプリを読みますし、テレビ番組だって地上波ではなくデマンドサービスを視聴しますよね。つまり、若手経営者と我々のような世代では、見ている世界がまったく違うわけです。
そして若い世代の優秀な人材は、IT産業に集まっています。産業構造的にいうと、日本もいよいよ転換点に来ているのかなと考えています。
田中 おっしゃるとおり、30代〜40代の起業家は、IT系の人が多いですね。我々の世代から見ると、経済団体の活動は自分たちの事業とあまりリンクしていないイメージがありました。

ただ最近では、例えば「AIが契約書をチェックするリーガルテックが非弁行為に該当するのでは」と問題になったように、BtoBのスタートアップが国の規制に阻まれて苦労する実態があります。
壁に直面する現実を受けて、「経済団体などを通じて声を上げなければ」というムーブメントが出始めたところです。
冨山 今の日本は“規制の上に規制がある”社会ですから、何か新しいことをやりたいときに、障害が多すぎるんですよ。
例えばグローバル企業が活動する中で、アメリカと日本、あるいはヨーロッパと日本を比較したときに、日本だと「できないこと」がたくさんある。
そこを「日本だから仕方ない」と諦めてしまうのか、「いや、国を変えるために頑張るぞ」と立ち向かうのかで、経営者の姿勢というのは全然違ってきます。

例えば田中さんが経営するグリーのビジネスにしても、30年前なら規制があって事業自体が不可能です。それを変えられたのは、当時の30代〜40代の若手経営者が、国の規制と戦ってきた歴史があるからです。
規制にぶちあたったとき、アメリカではとりあえずやってみて、行政が出てきたら裁判で突破していく方式です。
一方、日本では法体系自体が違うので、制度そのものを改革しなくてはならない。つまり、国家経営に関わるということです。
僕自身の経験では、経済同友会の活動を通じて国家経営にタッチする経験は、自分の会社の経営にもものすごく役立ちました。若い経営者の皆さんにも、ぜひおすすめしたいです。