2022/08/09
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2020年5月、無印良品が公式ネットストアで食用コオロギのパウダー(粉末)を練り込んだコオロギせんべいを販売した。大きな話題になったこともあり、発売日に即完売したことがニュースにもなった。あまり知られていないことだが、200店舗で販売されるようになった現在も、入荷されるとすぐに品薄になる人気商品だ。
このヒットを受けて、2021年12月、第2弾としてコオロギパウダーを使用したチョコバー「コオロギチョコ」が発売された。こちらはネットストアと全国221の店舗で発売されている。
この2商品は、徳島大学発の食用コオロギベンチャー、グリラスとのコラボで開発された。同社は品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を自社で行い、年間10トン以上のコオロギパウダーを生産する体制を確立している。近年、日本でコオロギを扱うベンチャーが続々と誕生しているなかでも、2019年5月の創業時からの累計調達額が5.2億円とトップランナーである。
35歳の時に同社を立ち上げた渡邉崇人は、徳島大学バイオイノベーション研究所の講師と二足のわらじを履く。グリラスの事業は「昆虫食」という視点で語られがちだが、大学4年生の時からコオロギの研究をしてきた専門家が目指すのは、食用コオロギを「サーキュラーフード」として普及させ、日本、そして世界の食料危機や環境問題の解決に貢献することだ。
渡邉が目指す「サーキュラーフード」とは? を説明する前に、そもそもなぜコオロギなのか、コオロギにどんなポテンシャルを感じたのか、その歩みを振り返ろう。